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情味ある男

       
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 ▼江戸は芝田町に住む宇八という男、ある時、北町奉行、依田豊前守に恐れながらと訴えたその理由は、宇八の娘、お由が同じ町に住む吉右衛門に嫁いだだが、不縁になって戻って来た。宇八は文句も言わずに、お由を引きとったが、吉右衛門はお由の持って行った嫁入り道具を返そうとしない。どうかお上の御慈悲をもって嫁入り道具を取り返して戴きたいと言うものだった。

 豊前守はすぐさま吉右衛門を奉行所に呼び出した。

 ※「その方、妻を離別致しながら、なにゆえ由の道具を返さぬのか。いかに町人とは申せそのような卑しきことはせず、早々に道具を親元へ帰すように致せ」

 ◆「恐れながら申し上げます。お奉行さまは、お由の言い分ばかりをお聞きなされますがお由は私の嫁になって三年と言うもの、命にかかわる大病ばかり致し、持参した道具はみな人参代として売り払ったのでございます」

 ※「これ宇八、吉右衛門の申すことがまことであれば、煩いを癒やすため、道具を払ったのは致し方ないことじゃ。諦めるがよい」

 ▼ところが、宇八もお由も、病気など全くしたことが無いと申し立てる。親類、縁者も口を揃えて同じことを言った。

 ※「吉右衛門、その方、奉行をないがしろに致すのか、偽りを申すと容赦はせぬぞ」

 ◆吉右衛門は懐に手を入れると、怒る豊前守に分厚い書付けを差し出した。
「お奉行さま、私の申すことが嘘と思し召すのでございましたら、これを、とくと御覧下さい。
人参代の受け取りでございます、これが、なによりの証拠と存じます」

 差し出された書付けを、じっと見ていた豊前守。

 ※「これはまことに人参代の受け取りに相違ない。吉右衛門、その方の致し方、武士に劣らぬ、あっぱれなもの、宇八、これへ参れ、由の命に代わる受け取りである、手に取ってとくと見よ。これでも、尚、お上の手を煩わすか。得心して早々に立ち帰れ」

 ▼と、書付けを宇八に渡す。それを見た宇八は驚いた、書付けというのはお由が三年の間、密通していた男の恋文である。吉右衛門はことがあからさまになれば密夫、密婦は死罪である。

 ※それでは二人が可哀そうだと、事を穏便に計らったのだ。豊前守も吉右衛門の情義に免じ、密夫密婦を罰することなく許した。

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 魑魅魍魎が跋扈する、平成の世に比べて 【密通した・密夫、密婦は死罪】
江戸時代の法は素晴らしい!

大江戸かくれ話 商品の説明  

  内容(「BOOK」データベースより)裏側からのぞく処世の知恵。 内容(「MARC」データベースより)

 富者が滅びて貧者は永続、恐怖のボンボン家を滅ぼす、江戸の債権取立業、世にも不思議な武家の商法、花も実もある名裁判官、田舎武士の江戸生活、寛政の力士像…。裏側からのぞく処世の知恵を紹介します。

トップカスタマーレビュー おすすめ!

 ※この本では学校で習う、各時代ごとの筋書きだけをなぞる歴史では分からない隠れた歴史がよく分かる。この本では主に庶民の生活に関する話が多いが、江戸の時代を生きた者なら大名、武士、医者など様々な人物たちに焦点が当てられている。

 ※人物同士の会話はそれら人物たちの口から出る口語調で語られており、正に自分がその場で彼らの話を聞いているような気さえして楽しい。

 ※一つ一つの話が歴史を学んでいる者でも知らない小話で構成されており、初めから終わりまで興味を失うようなことはなかった。時々作者が「江戸の時代に存在した日本人の道徳や美徳」と「今の日本に渦巻く堕落した精神」を比較して言う皮肉も的を得ていて面白い。

 ※ただ、題名の通り「かくれ話」であるので、「表」の歴史を知っていないと難しい内容である。しかし、一通り歴史を学んで好きである人なら、この本が面白いことは保障する。
たくさんある小話の中でも「エッ!こんな偉人が」や「実像 近藤勇」や「蛇の恩返し」は特に好きである。 

 『百聞は一見に如かず』 ( ^ω^)おっおっおっ

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