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翁の笑顔が曇る

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   「とうとうたらりとうたらり」。昨年10月に俳優の平幹二朗さん
   が亡くなった時、まず思い出したのがNHK大河ドラマ「国盗
    り物語」の斎藤道三役だ。若き日は油の行商人。


 謎の呪文を唱えながら、垂らした油を銭の穴の中に通す。銭に油がかかったらただにするという口上で道行く人を引き付けた。この呪文はおそらく能「翁(おきな)」の謡曲からきているのだろう。そちらは「とうとうたらりたらりら」だが、語源や意味については不明だ。

 能では最も神聖な曲とされ、祝福のために舞われる「翁」。なぜお年寄りがめでたい場で主役になるのか。昔は平均寿命が短かったせいもあるが、年老いること自体が素晴らしいことで、長寿を全うした老人は高い霊能力を持つとされた。

 残念ながら「尊敬されるお年寄り」のイメージを揺るがしかねない事態が起きている。県内で昨年摘発した万引犯のうち65歳以上高齢者の割合が45%に上るという。全体の高齢化は進んでいるが、それを上回る増加率。お金を持っていても万引するケースが多い。

 何のために? 動機ははっきりしないが、細る年金を悲観して手元の現金を残すため、人間関係の希薄さから寂しさを埋めるためなど推測する。犯罪は許されないが、高齢者を取り巻く環境を考えると、責めるべきは当人だけだろうか。

 延岡・内藤家に伝わる能面に、翁で使う白式尉(はくしきじょう)がある。その慈愛に満ちた笑顔は「最も神に近い役」といわれるのもうなずける。長い人生経験は今も地域社会の宝物だ。笑顔も曇る恥ずかしい所業に追い込むような社会であってはならない。【くろしお】

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    珍念のコメントは『蛇足』・・・。






 

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