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××市、A男さん

64


    地方の警察組織を描き続けてきた作家横山秀夫さんの真骨
    頂と評価される。今年、映画化され話題を呼んだ小説「64」だ。
    プライバシー保護の関心が高まる中、事件・事故の匿名発表を
     テーマにしている。







 ▼架空の県警が舞台だ。ある交通事故の発表で、老人をはねた女性の実名が伏せられた。妊娠中で取り乱しているというのが理由だった。記者クラブ側は氏名を公表するよう激しく迫り、主人公の広報官を突き上げる。実は明らかにできない裏の事情が隠されていた。
 ▼もめた後、広報官は実名を明かす。事故後、亡くなった老人の人となりも報告した。妻と死別し、身よりもなく長屋風の2DKに暮らしていた。楽しみは月に一度の飲み屋での焼酎2杯…。事故に遭ったのは、その帰り道だった。広報官は、はたと気付く。匿名騒動は名前が紙面に載り、誰かが老人の死を悼む機会まで奪っていたのだと。

 ▼県内でも日々、さまざまな話題が新聞の社会面をにぎわす。仮に被害者名が「××市、A男さん」などと仮名報道されたら、その人の歩んできた一生に思いをはせることはできない。悲惨な事故の撲滅を願い、凶悪な事件を憎む気持ちも湧いてこないだろう。(あぶくま抄)

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     このコラム『頂門の一針』痺れる!



   横山秀夫「64」内容詳細:元刑事で一人娘が失踪中のD県警広報官・三上義信。記者クラブと匿名問題で揉める中、“昭和64年”に起きたD県警史上最悪の翔子ちゃん誘拐殺人事件への警察庁長官視察が決定する。だが被害者遺族からは拒絶され、刑事部からは猛反発をくらう。組織と個人の相克を息詰まる緊張感で描き、ミステリ界を席巻した著者の渾身作。

内容(「BOOK」データベースより)

 警察職員二十六万人、それぞれに持ち場があります。刑事など一握り。大半は光の当たらない縁の下の仕事です。神の手は持っていない。それでも誇りは持っている。一人ひとりが日々矜持をもって職務を果たさねば、こんなにも巨大な組織が回っていくはずがない。D県警は最大の危機に瀕する。警察小説の真髄が、人生の本質が、ここにある

トップカスタマーレビュー

 読み終えた後、放心状態になる。面白いを通り越し物凄い小説。 投稿者  ハナ

◆評価の高さから「ど~せ読めばそれなりに面白いんでしょ」と思いつつ、しかし警察小説ということで身構えてしまい、未読であった。そして今更ながら読んだのだが・・・・
なんていうかすいません、いやはや参りました。もうこれ「面白い小説」を通り越し、「物凄い小説」です。ハンパないっす。

◆この小説を一言で言い表すなら、言葉の使い方が合っているか怪しいが、「重厚」が当てはまると思う。ストーリーが重厚、横山節全開の文章が重厚、そもそも単行本自体が本当に重厚。ここまで密度が濃い小説だと頭がクラクラしそうだが、文章がこの手の堅苦しい小説にしては相当読みやすく、何より先の展開が気になってどんどん読み進めてしまう。特に終盤の展開はスピード感もあり、読んでいて本当に心臓がドキドキした。この物語は終着点はどこなのか、本当に予想がつかない。

◆読み終えた後、しばらくボーッと宙を眺めていた自分がいた。「今自分は物凄い小説を読み終えた」という満足感、充実感で満たされたからだ。こういう経験、人生でどれだけできるものか。少なくとも自分にとって、そういう経験ができた一生忘れられない小説となった。

◆「気になるけど、警察小説という堅いイメージ、本の厚さが原因で読んでないんだよな~」という人は、速攻で読むべき。

    渾身の一作  投稿者  okachi 

●ずっしりとしたボリューム。それもそのはず、ページ数は著者最長の647ページにも及ぶ。長い。しかしそれだけ作者には書きたいことがあったということだ。組織と個人。警察とマスコミ。家族の問題。過去の因縁。。著者が今まで書いてきたテーマで直球勝負している。「俺にはこれしかない」という作者の魂(覚悟)がこもった一球だ。

●七年ぶりの横山秀夫の文章は懐かしく心地よい。鈍るどころか鋭さを増し、読者に読むのを止めさせない。もう一章、もう一章と思っているうちに、読み終えてしまっていた。
長年待っただけあり、読み応え十分の大作になっている。

●著者の警察小説の特徴として、派手に事件を解決する刑事よりは、どちらかと言うと地味な事務畑の人が主人公になることが多い。今作もその例にもれず広報官が主人公だ。
D県警の広報官・三上義信の家族に起こったある事件を通奏低音として、物語は緩むことなく次々と展開していく。全編に渡り緊張感が張り詰め、三上の息遣い、叫びが聞こえてくるかのよう。

●三上は少ない手がかりを追って、徐々にD県警を揺るがしかねない秘密の核心に迫っていく。その過程で多すぎることを考え、悩み、葛藤し、怒り、脅し、涙する。まさに一人の人間が主人公なのだ。組織での男の葛藤を見せられると、自分の父を思わずにはいられない。自分の父も(程度の差はあるが)会社という組織に属し、子供である自分を含め家族を養ってくれた。父の、決して家族の前では見せない苦悩を垣間見た気がした。

●そして著者は、警察官である限りどんな人でも全員警察官としての誇りを持ち働く姿を描いている。横山秀夫の本を読んで奮い立たされる本物の警察官もいるのではないだろうか。

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   『百聞は一見に如かず』 珍念、本と・映画を見てみたい!

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