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「あのテープのせいで一生台無しや!」

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     名神高速道路の大津サービスエリアからは、琵琶湖が見える。
     空気の澄む今頃は特に見晴らしがいいが、深い感慨を抱く人も
     いるだろう。1984年11月14日、ここに「キツネ目の男」が現れた









◆この日は、食品会社が次々と脅されたグリコ・森永事件で、警察が最も犯行グループに近づいた日とされる。一味とみられたキツネ目の男が捜査員に目撃され、高速の下では怪しい車がパトカーの追跡を振り切って逃げた

◆今年の山田風太郎賞に選ばれた塩田武士さんの「罪の声」はこの事件を丁寧になぞった小説だ。脅迫電話に使われた幼い子どもの声。大人になった男がそのテープを見つけるところから物語は始まる

◆兵庫に端を発し未解決に終わる「グリ森」とは何だったか。一言で語れる人は恐らくいない。「どこでミスをしたのか、犯人に聞きたい」とテレビで話していた捜査関係者の無念は心に響いた。それぞれの立場にそれぞれの思いがあるのだろう

◆塩田さんは学生のときに事件の本を読んだそうだ。テープの子どもが同世代だと知り、彼らのその後を書こうと思ったという。「11月14日」を境にある一家が悲劇に見舞われていく筋書きは、小説といえども真実味があった

◆罪の声。「あのテープのせいで一生台無しや!」という作中のセリフが、胸を刺して痛い。【正平調】

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「罪の声」 トップカスタマーレビュー

30年の時を経て目覚めた「亡霊」   投稿者  雀   

★グリコ森永事件が起こった頃、リアルタイムで報道に接していましたが、当時は新聞とテレビ、週刊誌くらいしか報道媒体がなく、警察が後からやっと出してくる「大本営発表」も、それが判明している事実の何%の内容なのか、一般市民には推察する術もなく、ただただ訳もわからず日本中が「食品に毒」という点で振り回された、という記憶しか残っていません。

★結局、犯人側がどういう形でどのくらい「儲けた」かもわからず、犯人グループがかなりの人数であったであろうに(おまけに子供まで関与していたにも関わらず)、最後まで誰一人として捕まることなく時効を迎えた、というのも、ある意味凡人の理解の範疇を超えた犯罪でした。

★本書中で犯人グループの一人が、「あの時代だから出来た犯罪だ」という意味の発言をしていますが、確かに、街中に監視カメラが溢れ、人々がスマホや携帯を持ち歩いてあちらこちらで撮影した動画や画像をネットにアップし、ネットの掲示板にあれこれ書かれるようになった現代では、もう無理な話でしょう。

★そんな昭和最後の大きな忘れ物のような事件を、事件に関する部分はほぼ史実通りのノンフィクションで、犯人にまつわる部分は作者のフィクションで、違和感なく融合させた本書は、リアルタイムでグリ森事件を知っていた人間にも、「本当にそういう構図だったのかも」と唸らせる力作です。特に、「犯人側に関与していた子供がいた」という視点で書かれていたのが、とても新鮮でした。

★確かに、犯人側の子供達も不測の事態がない限り、まだ元気に生きている年頃だと思えば、今、本書をどのような気持ちで眺めているのでしょうか。著者略歴によれば塩田さんは元新聞社勤務とのことで、さすがと言うべきか圧倒的な取材力や調査能力を感じます。まだお若いにもかかわらず、外連味のない真面目で簡潔な文章にも好感が持てます。本書ももちろんお勧めですが、早くも次回作に期待しております。

かく言う(珍念)『君の引用はたくさんだ、自分の言葉で述べたまえ』の声が仄かに聞こえる。

このままでは あの世で(閻魔さま)から叱られる。 ( ^ω^)おっおっおっ



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