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読書週間


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 夏目漱石は「小説を読むな」と娘たちに命じていた。「半可通の文学好きというのはどうもいかんね。自分の娘にあんなふうになられたら、たまらない」が口癖だったという。

 自分の小説さえ許さない徹底ぶりだった。長女の筆子さんは漱石の目を盗んでこっそり雑誌を読んでいるところを妹たちに見つかり慌てて本を閉じた。彼女が父の小説を読んだのは、漱石が亡くなった後のことだった(長尾剛著「あなたの知らない漱石こぼれ話」)。

 今年の読書週間(9日まで)の標語は本を選ぶとき、ページをめくるときの感動を凝縮した「いざ、読書。」。読書推進運動協議会は読書グループの結成、家庭文庫などの充実を訴え、とくに青少年が本に親しむ環境づくりに力を入れる。

 「読め、読め」と本を押しつけられ「書け、書け」と感想文や画を強要されてげんなりした体験をお持ちの方は多いだろう。押しつけは読書嫌いを助長する。読むことを禁じられたことで筆子さんの読書への渇望感はかえって高まったのではないか、と想像する。

 瀬尾まいこさんのデビュー第2作「図書館の神様」に若い人たちへ紹介したいセリフがあった。「のび太はどこでもドアで世界を回る。マゼランは船で、ライト兄弟は飛行機で新しい世界に飛んでいく。ぼくは本を開いてそれをする」。

 同著の主人公の名は清(きよ)といい、冒頭「坊っちゃん」について触れているから瀬尾さんは漱石ファンだろう。のび太に、マゼランに、ライト兄弟になるため「いざ、読書」だ。たとえ漱石先生が渋い顔をしても本の旅は手間いらずで楽しい。 【くろしお】

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「図書館の神様」 内容紹介

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      主人公は、清く正しい青春をバレーボールに捧げてきた
      その名も清(きよ)。あることがきっかけで、夢をあきらめて
      教師になるべく、海の見える中学校に赴任する(教員採用
      試験に受かっておらず、臨時雇いではあるが)。そこで、思
      いがけず文芸部の顧問となった清に訪れた変化とは……。
      「卵の緒」で坊っちゃん文学賞を受賞した瀬尾まいこの、デ
      ビュー第2作。大幅にファンを増やした評判作の、待望の文
      庫化。単行本未収録の幻の短篇「雲行き」も収録。



トップカスタマーレビュー

文学のススメ   投稿者  マキコ

◆瀬尾作品で初めて読んだ本、この本に出合えて良かった心から思えた一冊。心に傷を持つ高校の国語講師となったキヨは、たった一人の文芸部の垣内君と顧問として接していくうちに、自分の持つ正しさだけが全てではないと気付き成長して行く過程が丁寧に瑞々しく描かれている。

◆垣内君とのやり取りが軽快で楽しく、キヨが成長の過程で文学の面白さにも気付くのがこの作品の面白いところ。この作品を読み終えると他にも沢山の作品に触れてみたくなるのだ。この作品は文学への窓口の様な作品だと思う。とても素敵な一冊、読んで損はない。

とにかく爽やかな小説  投稿者  ringmoo 

◆余分なものがなく、今まで出会ったことがないような、とにかく爽やかな小説です。
主人公は、高校時代に打ち込んでいたバレー・ボールで、自分の一言から自殺者を出し、そこから離れる道を選んだが、何がしたいか解らないまま高校の講師になった清が主人公です。

◆そんな清が高校で出会ったのは、いやいや顧問をやるはめになった文芸部の垣内君です。この二人のつかず離れずの絶妙の関係が素晴らしく、読んでいる者の心まで清々しい気持ちにしてくれます。当然、傷ついていた清の心も洗われてゆき、やがて本格的に先生への道に進むことになります。

◆実はこの垣内君も中学の時のサッカー部の時代に、同様の傷を負って文芸部に来たのですが、二人の会話はそうした具体的な互いの「傷」の話にはゆきません。それでも、川端康成や山本周五郎などの文学を読んだり、詩を作ったり、走ったり、サイダーを飲んだりといった、とりとめのない行為のなかから、二人のいいなあと思える関係は生まれてきます。

◆この二人の感情に流されず互いに思いやるそっけない言葉。これが実に素晴らしい。この感覚が、この本の読後感を素晴らしいものにしているのでしょう。同時に収録されている「雲行き」も、なかなか楽しい短編です。

本の素晴らしさ 投稿者  春哉3号

 図書館に神様は本当にいるのかもしれない。この本を読み終わったときふとそう思った。
誰しもが何らかの傷を負って、日常を生きている。その傷がなんであれ、生きていくのが辛いと思うときは必ずあると思う。そんな気持ちのときは特に本書を読むことをお勧めする。
文学、本、思考、それらの様々なものを通じて私たちは言葉の中で生きている。

 その言葉の渦に呑みこまれそうになったとき、防波堤となってくれるのはやはり中身の詰まった言葉しかない。だからみずみずしい文章で書かれた本書は、勧めるに値する本である。読後感は爽やかな風と生への静かな渇望、何より本の素晴らしさを感じることができると思う。 神様好きはご一読を。

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  珍念・・・ 『論語読みの論語知らず』恥じています!

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