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文学者「君は誰が好きか」

   

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                  秋の夜、先輩コラムニストに誘われ、安酒場で杯を
                  重ねていた。酔いに誘われ文学話に迷い込んだ時
                  不意 に「君は誰が好きか」と聞かれた。答えの準備
                  もなく咄嗟 (とっさ)に口を突いて出たのが「伊藤左千夫」だった






▼聞いた先輩も意外だったに違いない。芥川龍之介あたりにしておけば良かったと後悔したが、俳人で名コラムニストの先輩は「ほほお」と破顔。固く握手してくれた

▼「実は」と言い淀みながら、同じ質問に先輩は「左千夫」と答えられずにきたことも明かしてくれた。二人だけの酒席は、15歳の政夫と2歳年上の従姉民子の淡い悲恋を描いた『野菊の墓』で大いに盛り上がった

▼歌人の左千夫は師事した正岡子規の没後、短歌会『アララギ』をまとめ島木赤彦や斎藤茂吉らを育てた。子規の写生文の影響を受けた純愛小説は明治38年に発表され、文壇で「名作か駄作か」と両論を呼んだ

▼「民子の死は主情的で陳腐」の批判に立ちはだかったのは夏目漱石だった。「自然で蛋白(たんぱく)で可哀想で美しい。あんな名品なら何百篇でも読みたい」と絶賛。茂吉も「涙の記録でこれほどのものは少ない」と続いた

▼昭和30年の映画化で大反響を呼び“純愛小説の左千夫”になった。オジさんが肩を並べ、純愛小説を論ずる姿は滑稽(こっけい)極まりなかっただろう。読書の秋である。夜長、静かな読書もいいが、気心の知れた仲間と好きな本を肴に飲む酒もいい。【天鐘】

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     少年政夫と民子の初恋を無常の下に描きだした木下恵介の名作
     伊藤左千夫の小説「野菊の墓」を木下恵介が映画化。
     公開は1955年。初めて観たのは中学生のころだった。
     いつの間にか、居眠りして内容は覚えていません 
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伊藤左千夫『野菊の墓』商品の説明 内容紹介

 政夫と民子は仲の良いいとこ同士だが、政夫が十五、民子が十七の頃には、互いの心に清純な恋が芽生えていた。しかし民子が年上であるために、ふたりの思いは遂げられず、政夫は町の中学へ、民子は強いられ嫁いでいく。数年後、帰省した政夫は、愛しい人が自分の写真と手紙を胸に死んでいったと知る。野菊繁る墓前にくずおれる政夫……。涙なしには読めない「野菊の墓」、ほか三作を収録。

トップカスタマーレビュー

野菊のような恋   投稿者  mlakshmi 

 とてもはかない純愛の物語。二つ年上の民子と政夫はいとこ同士。政夫の母があまり丈夫ではなかったため、民子は政夫の家へ手伝いに来ていた。もともと二人は実のきょうだいのように育っていたため、とても仲が良かった。しかし、二人が年頃ということもあって、周りがおせっかいをやくようになってきた。二人の恋やいかに。

 結婚するのも女が二つ年上では格好が悪いなどと言われ、結婚相手も家族が選ぶような時代の話だ。二人の純粋な気持ちがまっすぐ、柔らかに描かれている。誰もがかつてこのような恋心を抱いた事があるだろう。その気持ちが切なく思い出される筆致だ。最初で最後の恋。心に残る一冊。

お見事   投稿者  春哉3号 

 幼馴染のような関係で、年を経るとともに、お互いを好きであることに気付いた少年と少女が、心ならずも周囲の大人たちの介入によって隔てられ、目に見える形としては結ばれない結末を迎えてしまう物語。昔の作品であるので、当然のことながら文章の質は、現代の小説とかなり違う。しかし、それを読みにくいと思うことはなかった。

 逆に、伊藤左千夫氏の文体が、野菊の墓を描くにあたって、とても合っている。好きとはどういうことか、人が死ぬとはどういうことか、などを問うている作品ではなく、人間の感情の根幹を揺さぶってくるような、映像ではなく活字ならではの味が滲み出ている作品である。一読をお勧めする。

本気で泣いた 投稿者  ninetails 

 あまりにも切ない物語に、ラストシーンでは年甲斐もなく涙がこぼれた。
感動する小説というものは世に多いが、本気で泣いたことさえが嬉しいくらいに泣けた作品は今までにこれを含めて数本もないだろうと思う。最近読んだ明治時代近辺の浪漫的な作品の中で、自信を持って人に勧められる作品はまず、これ。文学的な必読という意味ではなく、全ての人に読んで欲しい日本文学屈指の名作だと自分は感じた。

 所謂、叶わぬ恋。幼なじみの関係からお互いに愛し合っていると意識し合うまでになった主人公とヒロインの成長の過程と世間的な風評を恐れて離れていってしまうすれ違いの関係が主な筋。前半部の主人公達の普段の生活は微笑ましく、自身がまるで物語の中に入り込んだように楽しめた。

 いたずらをし、またされる関係はありふれてはいるものの、読んでいると美しさがあると感じさせられる。お互いの感情は愛を認めあうまでになるが、世間の風評が邪魔をして徐々に離れていく二人の関係。遠く離れていってしまった人への恋慕の想いが限界までに達したときには、すでにその人は泉下の人となっていた……。

 クライマックスを超えての著者の心憎い手法には、心を揺り動かされるを得ない。今、思い返してみても胸に熱いものがこみ上げてくる。繰り返して言うのも何だが、本当に感動させられた。読んで見て欲しい。片田舎の広々とした風景がそこの中に埋もれていった一つの恋物語と共に、鮮烈に意識されるはずだ。 (*^.^*)

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