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悪魔がいる天国

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   日常生活やSFの世界、夢の空間に展開されるファンタジア。
   そこには、ふとしたきまぐれや思いつきによって人間を残酷な
   運命に突き落とす「悪魔」が存在する。卓越シタアイデアと
   透明な文体で描き出すシヨートシヨート36編を収録。どの
   短編も、ウィットに富んだ落ちが冴えている。









 昨夜、ずいぶん前に読んだ(星新一:悪魔のいる天国)の不思議な夢をみました。

 明け方。(略)ここは八十階建てのアパートに七十二階。ベットの上に横たわっている男は、この部屋の住人、宇宙旅行専門の保険会社のテール氏。

(中略)壁のカレンダーの上の時計が八時をさし、かちりと小さな音をたてた。それにつづいて、大輪の花弁のような形をした銀色のスピーカーから、音楽がわき、声がていねいに呼びかけてきた。

「さあ、もうお起きになる時間でございます。さあ、もうお起きになる・・・・」(略)

 天井から、静かに<手>がおりてきた。どこの家にもあり、人びとが<手>と呼んでいるこの装置は、やわらかいプラスチックで作られた、大きなマジック・ハンドのようなものだ。

(略)テール氏は昔のあやつり人形のように動かされ、自動的に開いた浴室ノドアに迎えられた。

※機械まかせのシャワーの後、<手>はテール氏に服を着せ、朝食を食べさせた。出勤時間がくると<手>は彼を部屋の片隅にある目的地まで人を運ぶ乗り物に入れる。

五分後に、テール氏の乗り物は、彼の会社の玄関に現れて止まった。出勤時間なので、玄関は大ぜいの社員んで込み合っていた。(略)

おはよう。テール君。どうしたんだい、ばかに顔色が悪いじゃないか」

※「異変に気づいた同僚は医者を呼び、容態をたずねる。

「どうでしょう。ぐわいは」 「もう、手おくれです。テール氏は前から心臓が弱かったので、その発作を起こしたのです」 「いつでしょうか」

「そうですね。死後、約十時間ですから、昨晩というところでしょうな」

近未来は、人類にとって幸福なのか・・・?

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(悪魔のいる天国)商品の説明 内容紹介

ふとした気まぐれで人間を残酷な運命に突きおとす“悪魔"の存在を、卓抜なアイディアと透明な文体で描き出すショートショート集。

トップカスタマーレビュー

星新一の世界を存分に楽しめる36編を収録した一冊  投稿者 ミヤコ

 ▼ショートショート(掌編小説)を生涯で1,000編以上も残し、その作品の質の高さもあり、「ショートショートの神様」と呼ばれている著者の作品の中から36編を収録した一冊です。
元々は1961年に中央公論社から刊行され、1967年に早川書房から改装版が出たものを、1975年に新潮社から刊行されたものである。現在でも版を重ね続け、多くの世代に読まれ続けている作品です。

 ▼人間に代わって必要なコミュニケーションをすべてとってくれる「肩の上のインコ」、壺に閉じ込められていた古代アラビアの魔人に、とても合理的な対応を示す科学者をえがく「合理主義者」、きつねに憑かれた憑きものを落とす「こん」、朝起きてから会社に到着するまでをすべて機械がしてくれる「ゆきとどいた生活」、幽霊の世界をシニカルにえがく「殉職」、豪華な金庫に隠された秘密が楽しい「デラックスな金庫」等々が収録されています。

 ▼余分な情報を一切そぎ落とし、必要最低限な言葉を、はっきりした起承転結の上に乗せて出来上がっている作品の一つ一つを堪能して読んでみてください。そして、それぞれの作品の最後に味わえる、あっと驚く結末も大きな魅力の一つですし、独特の会話口調も魅力的です。著者の力量の高さを感じる作品ばかりです。近未来の世界をえがくSFのショートショートを、どうぞ楽しんで、36編の中からお気に入りの作品を見つけてみてはいかがでしょうか。

哲学的ショートショート  投稿者 Tod

 ▼小学生のときに大好きだった星新一のショートショート。当時はただただその読みやすさと面白さに夢中になっていただけで、個々の作品の持つ意味など考えたこともなかったが、大人になってふと「あの作品はこういう意味だったのか」とその深さに改めて感心させられることがある。

 ▼例えば本書に収められている「もたらされた文明」は、地球から「鍵」を持ち帰ってきた宇宙人の話である。「それは何だ」「鍵というものだ」「何のために使うんだ」「自分の家に他人が出入りできないようにするためだ」というやりとりが続く。「どうしてそんなことをするんだ」という質問に対し「自分の家の品物を勝手に持って行かれないようにするためだ」と帰還した宇宙人は説明する。「どうして勝手に持って行くんだ」「その方が自分であくせく働いて品物を買うよりもはるかに簡単だからだそうだ」

 ▼聴衆は一瞬静かになってその意味を考えた後、にわかにざわめき始める。「なるほどなあ、そういうやり方があったのか」「どうしてそんな簡単なことに気づかなかったのだろう」ざわめきは収まらない。窃盗(≒悪)という未知の文化が地球からもたらされたのである。
 難点はいくらでも指摘できようが、根源的な問いを提示する星新一のショートショートは、大人のための哲学童話として充分鑑賞に耐えるものだと思う。筒井康隆や阿刀田高とは一味違った、美しい残酷さを湛えた作品群を堪能されたい。

読者の皆さまへ 『百聞は一見に如かず』  ゜.+:。(*´v`*)゜.+:。

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