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「総理大臣が貰(もら)つた手紙の話」

Dadakuron


     「堕落論」で知られる作家坂口安吾に皮肉な味わいの短編がある。
     題して「総理大臣が貰(もら)つた手紙の話」。80年近く前、1939
    (昭和14)年の発表ながら今なお新鮮。冒頭、総理宛てに「親展」
     の分厚い封書が届く。






▼投函(とうかん)した男は自己紹介する。自分は泥棒を業とする勤勉な市民である。何故(なにゆえ)にそうなったのか。借金して返せなくなったら、貸した方は忘れてくれない。夢の中まで追い回されてしまう。ならば賭け事でもうけようと思っても、すっからかんになって身を滅ぼすのが落ちだ。

▼その点、泥棒は盗む方も盗まれる方も面識がなく、なくなった金は諦めがつく。試しに“掏摸(すり)特区”を設けてごらんなさい。逆に互いに隙がなくなり、身体が俊敏になる。こんな妙な論理を展開する中で、次の文章が記憶に残る。「以後借金だけは堅く慎まれる方が宜(よろ)しい」

▼政府が決めた28兆円の経済対策。不足する財源を補うのは、建設国債という名の借金だ。消費活性化効果を疑問視する声も根強い。「日本は借金を業とする勤勉な国である」。たとえこんなふうに開き直ったとしても、誰が忘れてくれよう。つけは未来の国民に回ってくる。 【談話室】


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Hen













「堕落論」 〈人間は生き、人間は堕ちる。そのこと以外の中に 人間を救う便利な近道はない〉

と綴った「堕落論」 により、戦後の日本人の価値観を変え、また勇気を 与え、圧倒的な支 持を得た坂口安吾。無頼と反逆に 充ちた言葉の多くは、戦後の日本人への新しい指標 を示し、一大センセーショナルを起こした。その魅 力を堪能できる「堕落論」を はじめ、「続堕落論」 「青春論」「恋愛論」のエッセイを四作品収録。

トップカスタマーレビュー

思考の自由さと語彙の豊富さに惚れ惚れ  投稿者  マッキー

 ◆はじめて坂口安吾氏の本を読みました。生きていた時代も含めて大変な一生だった、だろうなと思いますが、戦後間もない作品とは思えないのはとてもニュートラルな思考だからでしょうか?武蔵の武蔵たる所以の「青春」のところではとても力が入っていますが 老境の武蔵に落胆するところはいかにも著者らしさが出ていました。

 ◆それにしても いくつかの言語が得意でありながらさらに圧倒的な日本語の語彙の豊富さに驚きました。

1世紀前の感覚,  投稿者 池田耕一

 ◆この本を、いつ、そして何故買ったのか全く記憶にない。まず私が読む本ではない類の本であった。ただ、私の未読本のお並んだ本棚になぜか並んでいたので読んでみた。確かに当時としては、かなり革新的なエッセイであったのかもしれない。私の死んだオヤジ世代のまさに大正から明治の雰囲気の漂う随筆であった。「続堕落論」に収められている天皇制に対する考え方は、戦後間もなくのそれまでの明治憲法的な考え方から180度の転向があった時代を反映して、当時はともかく新鮮な考えであってものであろう。

 ◆今でもかなり評価できるものがある。しかしながら、それ以外部分の記述は、今の感覚で見ると何とも陳腐としか言いようがない。大体「渝落」と言う堕落を意味する今となっては死語となっている言葉がしばしば出てくるので、後ろのようにある「語注」を見ないと意味が分からなかった。死語と言えば、デカダンとか切支丹バテレンとか言った死語となった外来語もかなりちりばめられている。

◆伊藤たかみ氏による解説によると、この本が発行された当時は、かなり反響があったのかもしれないが、現代の感覚では読んでいて「恥ずかしくなるような感覚」に襲われてしまう。その当時「斬新、革新的」などと呼ばれたものは、今考えるととても恥ずかしく思える。

◆例えば、関西漫才の花菱アチャコの「アジャパー」とか、石原裕次郎の「イカス」とか、フランク永井の「西銀座駅前」の中に出てきている『今夜も刺激がほしくてメトロを降りて階段上がれば、霧に渦巻く眩しいネオン」とか、比較的最近では、「ナウい」とか言った当時の流行語と言うのは今聞くと何とも恥ずかしく、切ないもので、なぜそのような言葉を人々は発していたのか不思議に思われてしまうが、それと同じような感覚を持たせる本である。

 ◆最先端の流行を追ったものの末路とは、このようなものであろう。何十年か後、「ダメよ~ダメダメ」などは同じ運命をだとるのであろう。流行の最先端を追うことのむなしさを改めて感じさせる一冊であった。

 Gyo
      読者の皆さまへ
      「堕落論」気が向かれましたら、お読み下さい!
      これ以上は『蛇足』

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