元裁判官の随筆集「峠の落し文」を読んだ。著者は4年前に亡くなった樋口和博さん。訴訟指揮や判決にも豊かな人間性があふれ「理想の裁判官」とも称された人物だ。
▼樋口さんは多くの死刑判決に関与した。「刑事裁判だけを専門にやってきた人でも、死刑判決を一度もやったことがない人もあるなかで、私は何ともめぐり合せの悪い裁判官だ」「『汝裁くなかれ』とは、宗教上の厳しい戒律であるにしても、人が『人の生命』を裁くということは何と大それたことであろう」。
▼死刑判決に関わることを「めぐり合せの悪い」「何と大それたこと」と表現。裁判官にとっても死刑は非人間的で過酷であることを端的に示していると感じた。
▼樋口さんは死刑制度がある以上、神ならぬ身の人間が裁くことに「一脈の救い」もあるようにも思えると書く。
▼「それは死刑の裁きをするその人間裁判官もまた、いずれは大いなる力によって厳正に裁かれるべき運命を背負った弱い人間の一人、という共感から生ずる連帯感によるものであろうか。極刑事件の裁判の法廷は、人間と人間との生命をかけた触れ合いの場。裁く者と裁かれる者との間には強い信頼感が生まれ、お互いに弱い人間同士の愛情が湧く」。
▼厳しい職責と向き合って、樋口さんの心境はほとんど宗教的な高みにある。しかし、樋口さんの言う「救い」、すなわち共感や連帯感、愛情は本当に生まれるのか。裁判官の一方的な幻想ではないのかという疑問は消えなかった。(一日一言)
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うまい、天晴! このコラム 『千金の重みがある』
珍念・ふと 次の名作が脳裏に浮かんできました
ちょいと、長くて面白くないかも知れません。
今しばらく、お付き合いを宜しくお願い申しあげます。
蜘蛛の糸 ~芥川龍之介 あらすじ
蜘蛛の糸は3つの段落から構成される掌握小説です。「一」では朝の極
楽の風景が語られます。真っ白な蓮の花が香ばしい匂いを発していす。
お釈迦様が池のふちをぶらぶらと歩いています。極楽の池の真下は、ち
ょうど地獄の底になっていることが語られます。お釈迦様が池からのぞき
こむと、地獄の底で、かんだたという大泥棒が苦しめられていました。
お釈迦様は、大悪人のかんだたも、一度だけ善行をしたことを思い出し
ました。かんだたは、森を通る時に、あしもとの蜘蛛を踏み潰さずに助け
たことがありました。お釈迦様は、その報いに、できることなら、かんだた
を地獄から助け出してやりたいと思いました。ちょうど、蓮の葉の上に、極
楽の蜘蛛が糸をかけていました。お釈迦様は、蜘蛛の糸を地獄にたらし
ました。
「二」では地獄の様子が語られます。蜘蛛の糸を見つけたかんだたは、
大喜びしてのぼりはじめました。しかし、地獄から抜け出すのは何万里も
ありました。かんだたは、途中で一休みしました。下を見ると、自分のあと
に、何百、何千という地獄の罪人たちが、蜘蛛の糸をつたってのぼってき
ているのが見えました。自分ひとりでさえ切れてしまいそうなのに、これだ
けの人数がのぼってきたらたまりません。
かんだたは、「こら、罪人ども この蜘蛛の糸はおれのものだぞ。お前た
ちは一体誰にきいて、のぼって来た。下りろ。下りろ」と叫びました。その
瞬間に蜘蛛の糸が切れてしまいました。「三」は、ふたたび極楽の様子が
語られます。
一部始終を見ていたお釈迦様は、悲しそうな顔をしました。しかし、極楽
の蓮は、そんな出来事にはとんちゃくせずに、あいかわらずいい匂いを
発していました。極楽も昼近くになっていました
ベニスの商人 ~シェイクスピア あらすじ
ユダヤ人の高利貸シャイロックは、日ごろ憎んでいたベニスの商人
アントニオに3000ダカットのカネを貸した。ところが、貿易船が寄港せ
ず、アントニオは返済不能になってしまう。アントニオがシャイロックに
交わした契約書には、「もし期日までに返剤できなければ、胸の肉1
ボンドを与える」という文言を入れていた。
シャイロックはただちに裁判所に訴え、契約の履行を迫る。
アントニオの窮状を見かねた知人が代わりに 返済しようとしたが、シ
ャイロックは「すでに契約の期日は過ぎている」と言って、カネを受け
取ろうとしない。
裁判所は契約書どうりに肉を切り取ることを許可した。シャイロックは
裁判官を褒め称え、さっそくナイフを取り出し、アントニオの肉を切ろう
とした。そのとき裁判官が「契約書には1ボンドの肉とはあるが、血の
ことは書いていない。もし一滴の血でも流そうものなら、所有地も財産
も没収する。また、肉が1ボンドより多くても少なくても相成ぬ」と宣告
した。 あ・・かく言う 珍念の「峠の落し文」はお粗末でした。