「人には、どれだけの土地がいるか」
(レフ・トルストイ(1828年~1910年)ロシアの作家
「戦争と平和」「アンナ・カレーニナ」「復活」など)
歩いて歩いて、少しでもたくさんの土地を手に入れようと
した主人公の「パホーム」の姿に読者は強烈なショック
を受けるでしょう!
土地がほしい パホームは村のお百姓でした、いつも
土地の事で村民と揉め事を起こしていました。
そして何度も、少しでも広い土地を求めて家具も家畜も
何もかも売って、一家で新しい土地に引越しました。
土地は良く肥えていて、作物が沢山とれましたが!
また欲が出てまた 自分の土地を買いたいと思いました。
パホームは新しい村の組合に入って十ヘクタールの土地を
貰い前よりも倍の広さで、そのうえ、土地は良く肥えていて
作物が沢山取れました。
「こんな土地なら、もっとほしい、そしたら、麦だろうと豆
だろうと、もっととれる。財産がふえる。」
しかし十ヘクタールのきまりでそれ以上は、売り地はなく
借りるのならあるという事でした。
土地を借りるなら、毎年面倒な手続が入りました。 それが
めんどうで、自分の土地を買いたいと思いました。
そんなとき、パホームは耳よりな話を聞きました。
遠くからやってきた旅の商人でした。 「パシキールという
所をご存知ですか?」 「さあ」 「あ、ご存じない、ここから
だいたい五百キロメートルくらい離れた土地です。私も
そこから来たんです。そこで私は、広いところを、とても
安い値段で買いました。小川にそった、平らな土地です。」
パホームは「パシキールって、どう行くんですか。」
商人から教えて貰った通り、パシキールの地主に贈る
お酒やお茶などを用意して、馬車で出かけました。
パシキールは広い草原で、人々は馬を飼って、馬の乳を
しぼったり、それでチーズを作ったりして長閑暮らしていました。
パシキールの人たちはパホームをテントに迎え入れて、馬の
乳とか羊の肉のご馳走をして歓迎しました。
パホームも、持っていった、お土産をわたしました。
「じつは、私は土地がほしいのです。狭い土地しか持って
いないので」」
パシキールの人たちは、こそこそなにやら相談していました。
そこへ,村長が「土地が欲しいそうですね、いいですよ。
どうか好きなだけ、いくらでもおとり下さい」
「あのぅ、それで土地の値段はどのくらいですか?」
「一日千ルーブリです」 「ん 一日って・・?」
「だから、一日歩き回った分を、千ルーブリでお分けします。」
パホームは驚きました 奇妙な取り決めでした。
「一日歩き回ったら、ずいぶん沢山の土地になりますね。」
村長は笑いながら「そうです、ただひとつ、決まりがあって
その日のうちに元の出発点に戻ってこれない時は、土地は
お渡しできません。」
「しかし、どんなふうにやるんですか? 私が歩き回った所に
何かしるしをつけておくんですか。」
「まず、貴方の決めた出発点、そこに村の誰かを立たせて
おきます。そこから歩き始めて、円をかくようにでも四角
でもいいですから、一回りしなさい。スコップを持っていって
適当に穴を掘って、目印をさしておきなさい、ただ、日が沈むまで
に帰ってこないと、土地は取り上げる事に成っています。」
その晩、パホームは中々眠ることが出来ませんでした。
「明日早起きして、出来るだけ沢山の土地を手に入れよう
一日で五十キロは回れるだろうな、そこに家を建てて、牛は
二頭飼って、手伝う人も雇とおう、手に入れた土地の半分は
畑にして、あとは牧場だ。」
夜明け前、パホームは、ちょっと、とろとろっと夢を見ました。
パホームは朝が来ると、馬車で出かけました、パシキール
の人たちも、馬や馬車で付いてきました。
シハンといわれる丘で、村長がパホームにむかって言いました。
「見わたすかぎり、私たちの土地です、どこでも、お好きな所を
お取りください。」 村長はキツネの帽子を脱いで地面に
おいて「さ、是をしるしにしましょう。ここを出発して、ここへ戻って
きて下さい。回られた土地はみんなあなたのものです。」
パホームはパンと水とスコップ持っていよいよ出発です。
どっちを向いても黒々した良い土地でした。
「よし、日の出の方に向かって歩こう、さあ、一分だって無駄
に出来ないいぞ、涼しいうちに、歩けるだけ歩くんだ。」
パホームはどんどん歩きました。 少しいくと穴を掘って
目じるしを立てました。
振り返ると、シハンの丘が見え,人々が立っていました。
もう五キロは来たかなと思いました。 だいたい一キロごとと
いう見当で目じるしを置いたのが,点々と五つに成りましたから
あと五キロ歩いたら、左へ曲がろうと思いました。
「行けば行くほど、いい土になるぞ。」 暑くなってきたので
パホームはチョッキを脱ぎ、長靴を脱いで腰のベルトに挟み
裸足で歩きました。
振り返ると、丘は遠くなり、その上の人々も、蟻ぐらいに
見えました。「さあ、ここで曲がるとしょう。」 パホームは
今までの穴よりちょっと大きくほり、大きな目じるしを差込
ました。 もう正午です、本当なら、一休みする所ですが
水を飲み、パンを少し食べただけで、歩き続けました。
ちょっと体がくたくたでしたが、ここでひと休みしたら、きっと
寝込んで立てなくなると思いました。
五キロほど行って、二番目の角を曲がろうとしましたが、
目の前に広がる土は黒々としたいい土で、作物がよく育ち
そうなので、そこも自分の土地にしようと欲張り、曲がるのを
もうすこし先に延ばしました。 それから二キロくらい行った所で
方向が分からなくなりました。
朝、出発した所、村長のキッネの帽子を置いた所は、もし今
帰ったらとしても、十五キロはありそうでした。ここを曲がったら
パホームの土地は歪に成ります、残念だけれども、丘を目指して
急がなければ、まにあわない!
シャツは汗で背中にぴたっと張り付いて、気持ちが悪いし、裸足
の足は草や石ころで、傷だらけでした、歩く早さも落ちているのが
自分でもわかりました。 太陽は斜めになり、もうすぐ地平線に
届きそうでした。
「ああ、ちょっと欲張り過ぎたかな、日が落ちるまでに 間に合わ
なかったら、この苦労も無駄になる。」 苦しくて苦しくて、息が切れ
そうでした。 それでも、パホームは足を引きずりひきずり、歩き
続けました。シャツもかなぐりすて、水筒も帽子も、腰のベルトに
挟んだ長靴も、放り投げましたが、ちっとも軽くなった気がしません。
心臓は、ドックドック、大きな音を立てて鳴り、足はふらふらででした。
足を前に出すのも辛くなりましたが、それでも、止まるわけには
出来ません。太陽が地平線に触りそうになって、真っ赤です
皆が立っている丘が、少しは近づいたのでしょうか、村長も見え
ます。 笑っているようです。みんなも何か口々に叫んでいます。
応援しているのか、あざ笑っているのかまでは分かりません。
パホームは、突然朝方見た夢を思い出しました。 あれは
なんだったのだろう。 パシキールの村長、ボルガ川の向こう
からの旅人、パシキールの話をしてくれた商人、見んな悪魔
だったのだろうか。
丘の下まで来ると、急に暗くなりました。 太陽が丘の向こうに
しずんだのでしょう。 パホームはがっかりして、思わずふらっと
倒れそうになりました。 けれども見上げると、丘の上はまだ
ちょっと明るくみえました。
「ああ、丘の上はまだ日が沈んでいない。」 パホームは
最後の力を振り絞って、丘を這い上りました。
村長の帽子がみえました。 パホームは思いっきり手を伸ばし
帽子にさわりました。
「えらい。よくやった。あんたは、しっかり土地を自分のものにした。」
村長が大きな声で言いました。 パシキールの人たちがパホームを
だき起こそうとしましたが、パホームの息は絶えていました。
みんなは、スコップでパホームの墓を掘りました。
たくさんの土地を欲しかったパホームに必要だったのは、頭から
足の先までの、ただそれだけの土地でした。
珍念の愚考です どれだけ土地やお金や肩書き等を
持っていても・・人間だれでも・・・必ず 死が訪れますが
あの世には 持って行けません
何をもっていくんでしょうか・・?
また 自分が死ねばどうなるんだろう・・?
珍念 の 永遠の課題です (#^.^#)
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